夜寝ている間、知らないうちに布団の中でおしっこを漏らしてしまう、このようなことが続くと心配になります。
「うちの子だけ夜尿があるの?」「クラスの中には、他にも夜尿のある子はいるの?」と不安になることもあります。
「夜尿症」とはどういうことをいうのでしょうか、またどんな時に受診して治療をしたら良いのでしょうか。
夜尿とおねしょ
夜尿症とおねしょはどちらも、夜寝ている間に無意識に排尿してしまう点では同じです。
その違いは年齢にあります。
夜尿症とは?
「5歳以降で、月に1回以上の夜尿があり、それが3ヶ月以上継続している場合」を夜尿症といいます。
5歳になっていなくておねしょがある場合は、まだ小さくて排尿機能が未熟なために起きる自然な現象であることが多いです。
おおむね小学校入学前後(5、6歳)になってもおねしょが続き、生活指導やお薬による対策が必要と判断された場合に、夜尿症として治療を考えます。
どのくらいの子が夜尿をしているの?
生まれてからずっと夜尿が続いている子(一次性夜尿症)の割合は、5歳で15%、6歳で13%、7歳で10%、8歳で7%、10歳で5%、12~14歳で2~3%、15歳以上で1~2%とされています。
この他に、一度おねしょを卒業した子が、再びぶり返すこともあります(二次性夜尿症)。
原因はなんですか?
夜尿症の原因は、寝ている間に作られる尿の量と、それをためておく膀胱の大きさのバランスが取れていないことが一つ挙げられます。
寝ているときに膀胱がいっぱいになり、「おしっこがしたい!」と起きておしっこができれば夜尿ではありませんが、おしっこがたまっても起きることができないということも、夜尿が続く原因と言えます。
治療すべきですか?
夜尿がある子は、そのままでも自然に夜尿がおさまることはあります。
ただし、適切な治療を行うことで、そのまま待っていた場合と比べて治癒率を2~3倍に高めることができます。
また、治療を開始する年齢は、10歳以上になると治療までに要する時間が長くなる傾向があります。
どのような治療がありますか?
夜尿症には、主に、夜間にできる尿の量を減らすものと、夜尿があったときに起きる訓練をするという治療があります。
お薬による治療
尿や水分量を調整するホルモンをコントロールしたり、膀胱がより多くのおしっこを溜められるように調節したりします。
アラーム療法
専用のセンサーを寝るときに付けて、夜尿を感知した際にアラームで目を覚まさせるという訓練をしていきます。
この訓練をしっかり行うことで、自然に夜尿が減っていきます。
なぜ良くなるのかは今のところ明確に分かってはいませんが、副作用もなく、安全で効果的な治療です。
家族みんなの協力が得られて、お子様本人もやる気があることがとても大切になってきます。
おうちでできること
受診や治療を考えたときに、おうちで見直してみるべきポイントがあります。
生活リズムは整っていますか?
決まった時間に起きて、決まった時間に寝るという生活習慣をつくり、自律神経を整えます。
夜遅くに食事をしたり、夜更かししたりして、朝寝坊して朝ごはんを食べられないようなことが続くと、リズムを崩すことになります。
できるだけ決まった時間に食事をとることも大切です。
夕食後に水分をたくさん摂っていませんか?
夕食の時はおつゆにお茶、食後にジュースやくだもの、さらにお風呂の後にお茶やお水など、寝る前にたくさんの水分をとっていると、夜のおしっこの量も増えてしまいます。
水分を摂ることは大切ですが、できるだけ午前中から夕食前に摂るようにして、夕食後は控えるなど、上手に摂るようにしましょう。
牛乳、乳製品、塩分、カフェインなどを夜にとりすぎていませんか?
牛乳に含まれるタンパク質やカルシウム、それに塩分、カフェインは、いずれも尿を増やす原因になります。
夕食後にはたくさんとらないようにしましょう。
寝る前にトイレに行っていますか?
トイレでおしっこを最後まで出しきることが大切です。
体は冷えていませんか?
寝る時に暖かくして、体を冷やさないことも効果があります。
便秘はありませんか?
便秘と夜尿は深い関係があります。
なにより、お腹に便がたくさん溜まっていると、おしっこを溜める膀胱も圧迫されてしまいます。
便秘がある場合は、便秘の治療をすることも大切です。
夜尿をしないように、夜に起こしておしっこをさせていませんか?
夜中に起こしてトイレに行かせると、夜におしっこを濃縮して少なくするホルモンがうまく出なくなり、かえって逆効果になります。
お泊まりなどどうしてもの時以外は、日常的にはしないほうがよいでしょう。
小さなことでも褒めてあげましょう
夜尿があっても叱らない、そして夜尿がなおそうとお子様が頑張ったら、小さなことでも褒めてあげてください!
ご両親へ
夜尿症はお子さんにとっても恥ずかしいと感じてしまう症状です。
精神的に負担になってしまうことがありますので、治療の際にはまわりの大人たちの接し方がとても重要になってきます。
見守る方も、うまく効果が出ないと不安や焦りを感じることもあると思いますが、お子様に対しては少しでも改善できたら必ず褒めてあげて、まわりもしっかりサポートしているという安心感を与えてあげることが大切です。
夜尿は体の仕組みによって起こる症状で、お子様のせいでもご両親のせいでもないことをよく理解していただきたいと思います。
そして、夜尿症の治療は、ご家族の協力とともに夜尿があるお子様自身のモチベーションが大切になりますので、みんなで夜尿を乗り越えよう!と前向きに考えていけると良いですね。