熱中症とは、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かなくなったりして生じるさまざまな症状のことです。
暑い環境に長時間いた時、あるいは吐いた後の体調不良は、どれも熱中症の可能性があります。
熱中症はどうして起きるのですか?また、どんな症状が見られますか?
人間の体には体温調節機能が備わっています。
運動などで体温が上昇すると、汗をかくなどして熱を逃し、体温調節して体温を一定に保とうとしています。
けれど、気温の上昇などのいくつかの条件がそろうと、熱を逃すのが困難となり、体温調節がうまくいかなくなります。
また、汗を大量にかくと体から水分や電解質が失われ、脱水を起こしたり、電解質のバランスを崩したり、熱による障害を受けたりして熱中症の症状が出てきます。
熱中症は、重症度によって、3つの段階に分けられます。
軽症:その場の応急処置で対応ができる状態
- たちくらみ(熱失神)
- 筋肉のけいれん(熱けいれん※)
- 大量の発汗
中等症:医療機関に搬送が必要な状態
- 頭痛
- 気分不快
- 吐き気
- 嘔吐
- 倦怠感
- 40度未満の体温上昇
重症:入院して集中治療の必要のある状態
- 意識障害
- 全身のけいれん
- 高体温(40度以上)
(※「熱けいれん」とは、いわゆる筋肉のこむら返りのことで、真水やお茶など塩分濃度の低い水分を補給して血液中の塩分の濃度が低下することで筋肉が硬直する症状で、「熱性けいれん」とは全く異なります。)
どのようなときに熱中症が起こりやすいですか?
熱中症は、1年のうち5月ごろから発生し、梅雨明けの7月8月ごろに多発します。
熱中症の生じる条件には、以下の3つがあります。
1:環境
高温、多湿、風が弱いなどの環境では、体から外気への熱を逃すのが難しくなり、汗の蒸発も不十分となると、熱中症が発生しやすくなります。
急に暑くなったときには、特に注意が必要です。
2:からだ
以下にあてはまる場合、熱中症が生じやすくなります。
- 高齢者、乳幼児、障がいや持病のある人
- 脱水状態にある人
- 体調不良 (病気、疲れ、寝不足など)
3:行動
- 激しい運動
- 急に慣れない運動をする
- 水分補給をしない
子どもはどうして熱中症になりやすいのですか?
子どもは大人より体温調節機能、とくに汗をかく機能が未発達で、体温を下げるのに時間がかかってしまうため、熱が体にこもりやすくなっています。
また、ベビーカーに乗った赤ちゃん、背の低いお子さんは、大人よりも地面からの距離が低く、地面からの照り返しの影響を強く受けます。
大人の顔の高さと子どもの顔の高さの差は3度ほども違うと言われています。
さらに、子どもは自分で体調を正確に訴えることが困難です。
異変を感じていても遊びに夢中になっていて、周りが気づいた時には症状が重くなっていることがあります。
熱中症を疑う症状がみられたら、まずどうすれば良いですか?
涼しい場所に移動させましょう
まず、涼しい場所に移動させます。
衣服を緩め、風通しをよくして体から熱が逃げやすくしてあげます。
また、肌に濡らしたタオルやハンカチをあててうちわなどで仰いだり、服の上から少しずつ冷たい水をかけたりして体を冷やしてあげてください。
意識がしっかりして水分が取れるようなら、塩分を含む水分(イオン飲料水)をのませてあげてください。
体を冷やしてあげましょう
体を冷やす目的で、冷たい水の入ったペットボトルやビニール入りの氷などを体に当てるのも有効です。
その場合は、首筋、脇の下、足の付け根(そけい部)のように、太い血管が走っているところに当てるようにしましょう。
体の冷却はできるだけ早く行う必要があります。
意識がぼんやりして救急車を呼ばなければならない時でも、救急車が到着するまでの間は体を冷やし続けてください。
具体的にどんな症状に注意してみる必要がありますか?
熱中症を疑う症状がでてきたとき、まずチェックするのは次の通りです。
- 意識がしっかりしているか
- 水分を自分で取れるか
- 症状は改善しているか
これらを満たしていれば、回復するまでその場での対応を続けてください。
救急要請を考える場合
反対に、次の症状が見られたら、ただちに救急要請を考えます。
- 意識がない
- 体温が40度以上
- 汗をかいていない
意識がないときは、誤嚥するおそれがありますので、無理に水分を飲ませないでください。
予防はどうしますか?
暑い日は外出や運動を控えましょう
熱中症の警戒アラートが出ているような日は、できるだけ外出や運動を控えるようにしましょう。
水分や塩分をとりましょう
水分を上手にとらせてください。
喉が渇いたと自覚するときは、ある程度脱水が進んでいる状態ですので、その前から決まった時間に少しずつ水分や塩分をとることが大切です。
風通しの良い服を着るようにしましょう
熱をうまく逃がせるように、風通しの良い涼しい服を着せ、帽子を被りましょう。
屋内でも適切にエアコンを使用して暑くなりすぎないようにしましょう。
暑さに慣れることも大切です
一方で、暑さに慣れることも大切です。
ずっとエアコンの効いた屋内にいるだけでは暑さに慣れることができません。
少しずつ外遊びをさせて、暑さに慣れる機会も作るようにしましょう。
地面からの熱を受けやすいことを忘れないようにしましょう
子ども特有のポイントとして、地面からの熱を受けやすいことを忘れないようにしましょう。
路上で長時間過ごすことのないように、こまめに日陰や屋内で休憩を入れましょう。
こまめに観察しましょう
小さな赤ちゃんや子どもは、自分の体の異変を上手に周りに伝えることができません。
熱中症が起こりそうな状況では、顔の赤さや汗のかき方など、お子さんの様子をこまめに観察して、様子がおかしくないかみてあげてください。