おたふくかぜとは、正式には流行性耳下腺炎といいます。
耳の下の耳下腺が腫れて痛くなる病気です。
両方の耳下腺が腫れると、まるでおたふくのお面のようになることからこの名前で呼ばれています。
主に、幼児から小学校低学年くらいの子どもに多く発症します。
どんな症状ですか?
片方もしくは両方の耳下腺(耳の前から下)が腫れあがり、痛みが現れます。
耳下腺が変わると、輪郭が変わります。
正面から見て明らかに腫れているのがわかります。
顎の下にある顎下腺が腫れることもあり、押した時に痛くなったり、食事をとったときに痛んだりします。
また、発熱を伴うこともあり、頭痛や食欲の低下、倦怠感などが見られることもあります。
熱は3~4日ほどで治まりますが、耳下腺の腫れは1週間~10日ほど続きます。
症状が似ている「反復性耳下腺炎」
症状が似ている病気に、耳下腺の腫れを何度も繰り返す「反復性耳下腺炎」があります。
これは、ムンプスウイルスとは別のウイルスによる病気です。
反復性耳下腺炎は、一般的に熱が出ない、痛みは2~3日と比較的短い期間でおさまる、人にうつしにくい、何度も繰り返すなどの特徴があります。
原因はなんですか?
ムンプスウイルスの感染が原因です。
ウイルスを持っている人からの接触感染、飛沫感染により感染します。
潜伏期間は2~3週間といわれています。
ムンプスウイルスは唾液を分泌する唾液腺に感染するため、唾液腺の一つである耳下腺に感染して腫れてきます。
診断はどうしますか?
症状は周囲の流行状況から診断されることが多いため、必ずしも検査は必要ありません。
ほとんどの場合、一度おたふくかぜにかかると免疫ができてその後はかかりにくくなるため、一度おたふくかぜと診断されていれば、繰り返し感染する可能性は低くなります。
しかし、症状だけでは区別しにくいこともあるため、過去にムンプスウイルスに感染して免疫を持っているか確認する目的で、血液検査をすることもあります。
治療はどうしますか?
おたふくかぜの特効薬は今のところありませんが、ほとんどの場合は1~2週間で自然によくなります。
熱や痛みの症状を和らげるために、解熱鎮痛剤を処方します。
食事に気をつけて、安静にして休ませてください。
おうちでできること
おたふくかぜにかかると、唾液腺の炎症が起こるため、食事によって唾液を分泌するため唾液腺が収縮すると痛みを感じます。
そのため、次のことに気をつけてあげるとよいでしょう。
すっぱいものを控える(オレンジジュースや柑橘系の果物など)
唾液がたくさんでることで痛みが出ますので、避けてあげるようにしましょう。
食事はなるべくかまずに食べられるものを
口を動かすことで痛みが生じますので、のどごしのよい、やわらかい食べ物(アイスクリームやゼリー、ヨーグルトなど)をとるようにしてください。
水分はできるだけ多く与える
食事をとりにくくなることによって、脱水に傾きやすくなります。
意識して水分を少しずつのませて、おしっこがしっかり出ているかどうか確認するようにしましょう。
合併症について
おたふくかぜは、子どもの頃にかかれば軽く済む、というわけではなく、子どもが感染しても合併症が起こることが比較的多い病気です。
以下の合併症が起こる可能性があります。
無菌性髄膜炎
高熱、嘔吐、頭痛が続きます。
症状が強いため、入院することがあります。
診断のため、髄液検査が必要になります。
まれに脳炎を起こすこともあります。
膵炎
腹痛や嘔吐が続きます。
精巣炎、卵巣炎
思春期以降に感染した場合に合併することがあります。
感音性難聴(ムンプス難聴)
片耳、ときに両耳が高度の難聴になり、今のところ治療法がありません。
おたふくかぜの予防
合併症が多く、治療が困難で後遺症が残るものも多いため、できるだけ感染を防ぐことが大切です。
ムンプスウイルス感染の予防のために、おたふくかぜワクチン(生ワクチン)が有効です。
2回接種が基本で、1回目は通常1歳になった時、麻疹風疹ワクチンや水痘ワクチンと一緒に接種し、2回目を数年後に接種するのが一般的です。
なお、おたふくかぜワクチンは現在のところ任意接種のため、有料となっています。
おたふくかぜワクチンの副反応として、まれに耳下腺が腫れたり、無菌性髄膜炎になったりすることがありますが、普通に感染するよりもはるかに軽く、頻度も低いことがわかっています。